相続手続支援
生前相続対策
【彼を知り己を知れば百戦殆うからず】は、「孫子」の謀攻の一節として有名ですが、相続対策に置き換えますと、まず、所有財産の正確な把握(彼を知る)から始める必要があります。
具体的には、財産(経済的な価値のあるもの全て)の内訳とその評価額(固定資産評価額等)を「財産目録」(又は「エンディングノート」などでも構いません。)という形にまとめておきます。また、借入金等の負債についても同様にまとめておけば、後々の遺言書作成や概算の相続税の計算にも大変役に立ちます。特に、後述する所有者不明土地との関連で、実家の登記名義人は是非法務局(登記事項証明書)にて調べておいてください。
その上で、今の財産状況で相続対策を行う必要性(純財産額が基礎控除額を上回る場合)があるのかを判断します。判断の結果、特段の相続対策は必要なしとの結論に落ち着くかもしれません。
一方、相続対策が必要な場合でも相続開始後ではできることは限られてしまいます。だからこそ、相続対策に関心にある方を対象としたセミナーが全国各地で開催され盛況となっています。しかし、本来の相続対策は、家族の構成や生活状況を考慮しその家族にあったオーダーメイドで行うべきであり、高度なスキームを使った過度な相続対策は場合によっては負の遺産を後世に残すことになります。
ですから、特定の商品を勧める専門家ではなく、中立の立場に立って助言してくれるような税理士等の専門家に相談すべきです。
具体的方法については、以下の方法が考えられます(その他にもあります)。
・暦年贈与(年110万円までは非課税)
・相続時精算課税制度
・贈与税の配偶者控除(おしどり贈与)
・住宅取得資金贈与
・教育資金贈与(2026年3月末迄延長)
・結婚子育て資金贈与(2025年3月末迄延長)
一般的には、解りやすい暦年贈与を利用している方が圧倒的に多いように見受けられます。しかし、暦年贈与制度は、贈与契約書の作成や非課税限度額が低いため、相続対策としては思った程大きな効果を期待できません。また、贈与制度は仕組みは簡単ですが、気を付けなければならないのは、一旦相続開始となれば、開始前3年以内の贈与(暦年贈与は課税又は非課税関係なく・相続時精算課税制度は開始前3年以上でも)は、相続税の課税価格に加算されるということです。つまり、相続税が課税される可能性があるということです。したがって、贈与制度を使う場合には、計画的に行うことが重要となってきます。
また、今後続々と相続に関連する制度(相続時精算課税制度、生前贈与加算の期間延長)の変更がありますので、相続対策を考えている方にとっては今後の動向から目が離せません。その他
【相続土地国庫帰属制度】の創設(令和5年4月27日から)
【相続登記の義務化】(令和6年4月1日から)
特に重要なのは、上記の「相続登記の義務化」です。背景にあるのは、空き家問題や所有者不明土地の問題です。登記名義人が亡くなっているにもかかわらず名義変更をせずに放置してしまった結果、権利関係が複雑になり、いざ手続きを行うとしても莫大な時間と労力が必要になってきてしまいます。さらにこの義務化により、正当な理由なく相続登記を3年以内(亡くなったことを知った日から)に登記申請しない場合、ペナルティーが科されることなります。この登記申請義務は令和6年4月1日が施行となりますが、施行日前の相続にも遡及して適用される点に注意が必要です。つまり、令和6年4月1日以前の相続についても施行日から3年以内に登記申請が必要となるということです。尚、相続登記の代替として、相続登記に代わる申出(相続人申告登記)という制度も令和6年4月1日施行となります。
代表者は、法律の専門家である行政書士及び社会保険労務士であるだけでなく、不動産・保険・タックス等の専門家である国際上級ファイナンシャルプランナーでもあります。
よって、一連の相続手続きに関し、全体を見通したアドバイス等を行うことができます。
遺言書作成及び遺産分割おけるアドバイス等においてもこれらの知識は必要不可欠です。
相続開始後手続
いざ相続が発生すると、遺族の方がやるべき手続きはたくさんあります。その中には特に期限が決められているものがありますので、遺族の方が相互に協力し合って進めていかなければなりません。しかし、これらの相続手続きが未経験であったり不慣れな場合、どこから手を付けたらいいのかもわからず、時間だけが過ぎて行くような状況になってしまいます。そのような時には、是非当事務所にご相談ください。
当事務所がご遺族の方からお話しを伺い(遅くとも四十九日法要位までに)、全体の流れを説明し、優先順位をつけて手続きを進めていきます。
尚、民法改正により令和元年度7月1日より、預貯金の払戻し制度が利用できるようになりました。この制度は、遺産分割を経なくても被相続人の預貯金を一定程度引き出すことが出来ますので、葬儀費用等(入院費用や葬儀等の領収書はきちんと保管して、他の相続人に説明できるようしておきましょう)に充てることが出来る大変助かる制度です。是非利用してみてはいかがでしょうか?
但し、相続放棄(一定の債務のみを放棄することは出来ませんのでご注意下さい)を考えている場合には注意が必要です。
遺族の方は、相続発生直後は深い悲しみの中にあると思いますが、まずは故人の遺品整理(遺言書・その他思わぬものが見つかる場合がある)から始めてください。遺族の方の中に特に故人と同居している人がいないような場合には、故人が生前にどのような生活状況であったのかを知ることは、これからの相続手続きを進める上でも大変重要な事です。
各種届出・名義変更
- 健康(介護)保険の資格喪失届
- 年金受給権者死亡届
- 各種公共料金の名義変更
- 各種料金(税金)の引落口座の変更
- 携帯電話の解約
- クレジットカードの解約
- 免許証・パスポートの返却
- 死亡保険金の請求
相続手続き
- 遺言書の有無の確認
- 相続人の調査確定
- 相続財産の調査確定・評価
- 相続承認・放棄の選択(3ケ月以内)
- 被相続人の準確定申告(4ケ月以内)
- 遺産分割協議(特に期限はない)
- 名義変更(預金・株式・不動産・車)
- 相続税の申告(10ケ月以内)
上記2つの手続きは、同時に進めていきます。
相続開始後の相続手続きで、一つ気にかけておいて頂きたいのは税務署からのお尋ねです。
お尋ねには、下記の二つの種類があります。
・【相続税についてのお知らせ】
・【相続税の申告等についてのご案内】
これらの書類が郵送された場合でも、事前に相続財産の把握を行っていれば慌てずに済みます。特に緊急性が高いのは、【相続税の申告等についてのご案内】の方となります。明らかに相続財産が基礎控除額を下回っている場合以外は、税理士の無料相談を受けてみると安心かもしれません。但し、相続税の申告が必要なケースでは、時間的な余裕はそれほどありませんのでご注意ください。
相続手続きの中で特に重要なのは、遺言書の有無(遺品整理により見つかることもあります)の確認です。相続財産は被相続人(故人)の固有の財産ですので、その処分について自由に決定することができます(勿論遺留分の壁はありますが)。遺言書は被相続人の意思そのものであり、法定相続分よりも優先されます。したがって、この遺言書の存在の有無をうやむやにしたまま遺産分割協議を行い後で仮に遺言書が出てきた場合、前記遺産分割協議は無効(遺言書と異なる部分)となってしまいます。それでなくても限られた貴重な時間の中で相続手続きを進める訳ですから、この時間のロスは大変痛いものとなってしまいます。
尚、自筆証書遺言につきましては、令和2年7月10日より自筆証書遺言の保管制度が始まりましたので、今後はこの制度を利用した遺言書が増えることが予想されます。したがって、この制度をよく理解した上で、法務局(遺言書保管所)にて、【遺言書保管事実証明書】や【遺言書情報証明書】などの交付請求をする必要が場合によっては出てくるかもしれません。
次に大事なことは相続財産の調査です。こちらも遺言書と同様に、遺品整理により思わぬ財産や借金が見つかることもあり、遺産分割漏れや場合によっては相続放棄の選択をしなければならないかもしれません。自分にはこれといった財産はないから、自宅である土地建物の名義変更だけでよいだろうと安易に考えた結果、後から他の不動産がみつかるケースもあります。例えば、集落等で所有する公民館等の施設や敷地が被相続人を含め何十人の共有となっていたケースでは、子らの相続人はその存在を全く知りませんでしたが、当事務所の調査により発見することができました。これらの不動産は、公共性が高いことにより固定資産税が減免となっている為、遺産分割時点まで気付かなかったようです。実際、当該不動産の全部事項証明書を閲覧すると、それが推測されるような記載が多く見受けられました。
また気を付けなければならないのは、相続人(遺族の方等)の中に重度の認知症や未成年者の方がいる場合です。この場合には、後見人あるいは特別代理人の選任手続きに時間がかかりますので、一刻も早い準備が必要となってきます。さらに、遠縁の方(甥や姪)が相続人となっている場合には、普段より付き合いがあれば話し合いもできますが、全くの疎遠となっている場合には、住所や連絡先が分からない場合も考えられます。そうしますと、相続人全員がそろわず遺産分割協議が行えない状況になってしまいます。
遺言書の有無の確認 ⇒ 相続人の確定 ⇒ 相続財産の確定・評価 ⇒ 相続単純承認
ここまできましたら、いよいよ遺産分割協議です。遺産分割が成立するためには、各相続人全員の合意(法定相続分に関わらず)が必要です。しかし、スムーズに相続人同士の話し合いでまとまれば言うことはありませんが、実際の遺産分割においてはそれぞれの主張が交錯し合い、中々まとまらず時間だけが経過してしまうことが多々あります。
そのような場合には、基本的に法定相続分を考慮しつつ、再度相続人全員で協議を行うことになりますが、相続人に中に特別受益に相当するような生前贈与を受けた方もいるでしょうし、また寄与分(相続人のみ)を主張する方もいるかもしれませんので、実際の遺産分割においては杓子定規にいかないのが実情です。
遺産分割協議は各相続人の利害が対立する場でありますので、当事務所では一定の相続人の利益を代弁したり各相続人間の利害を調整したりすることはいたしませんが、オブザーバーとしてアドバイス等を行うことはやぶさかではありません。
もし相続人間でどうしても意見がまとまらない場合には、家庭裁判所において調停、審判の手続きに進み判断してもらうことになります。この場合には、終了までかなりの時間がかかることを覚悟しておかなければならないでしょう。
ここで、ひとつ遺産分割協議における心構え(?)を紹介しておきます。
(民法906条)
【遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする】
上記の規定は、遺産分割に当たっては相続人同士の色々な事情(生活状況・健康状態・就業状況等)も考慮して、(思いやりをもって)行ってくださいと言うことでしょうか?
そしていざ相続人間の分割協議がまとまりましたら、後はその分割協議に従い名義変更等の手続きを進めることになります。尚、不動産等の名義変更に関しては現在のところ義務でなく、売却を考えていない場合は緊急性がない為、何もせずに放置していらっしゃる方も実際多く見受けられます。しかし、そのまま何もせずに放置していた結果、数次相続になってしまうこともあります。さらに令和6年4月1日からは相続登記が義務化されます。
数次相続の具体例としては、まず父親(被相続人=名義人)が亡くなった後、遺産分割(名義変更)をせずに放置している間に、母親(相続人)が亡くなられてしまったケースがあてはまります。このケースでは、両親の遺産分割が必要なり手続きとしましてはかなり煩雑となります。
実際、当事務所が受託する相続手続きの約半数は、この数次相続に関するものです。
このように、相続手続きに関しましては、後になればなるほど権利関係が複雑なることが予想されますので、然るべき時期に行うことをお勧めいたします。
尚、不動産等の名義変更につきましては、提携委託先であります司法書士事務所へ依頼することになります。